妻が泣いた

妻が泣いた。

今朝仕事に出る前だ。
本当に辛いのは彼女なのに、私の方が動揺していて、泣けなかったんだろう。
子供たちを不安にさせたく無かったのだろう。
子供たちの学校が休みで、私が日当直だから、朝は二人で食事した。
涙は見せないようにしていたけど彼女に一声かける度に、鼻声になってしまう。家を出る直前になって彼女も泣いた。ごめんね、と言った。あなたが動揺して、事故でも起こさないか心配、と言った。私も、ごめんね、と言った。しっかりしなきゃいけないのに、辛いのは君なのに、と続けたかったけれど、気持ちが溢れてしまって、涙をこらえようと、くぅと息を漏らしただけの、情けない夫だ、私は。
 
しばらくの肩をだいて、それから、行ってくるといつものように言って、家を出た。彼女はいつものようにサッシを開けて私の車を見送っていた。
 
この思い出が、恥ずかしいメロドラマみたいに、二人で笑えればいい。10年たったら笑っていたい。二人で。